2005年06月28日

壊れた脳 生存する知

   山田規畝子さん…ご存知ですか?  

   『壊れた脳 生存する知』の著者です。

   先日のOT学会の、とある講演でも話題に上がりました。

   過去にこの本は読んでいますが、再び手に取ってみました。

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患者であり、主治医であり、セラピストであった山田さん
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山田さんは整形外科医。20〜30代にかけて3回の脳出血。
2回目の時に頭頂葉病巣による視空間認知障害:本や新聞の改行が困難、
漢字のへんとつくりの位置関係がわからない、空間に順序正しく並んでいるものの規則性がわからない。

3回目の時には大脳基底核病変により球麻痺、視床痛、半側視空間失認を抱える。
「医者だから自分でやらなければ恥ずかしい」という思いから、山田さん自身で障害への戦略を考えたのです。

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山田さんが考えた戦略
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・繰り返し練習:同じ箇所を何度も読むと、本の内容が頭に残る
・他力本願:育児中、子育て中のお母さんを集めて育児本の輪読会
・視覚遮断:階段では手すりを持って目をつぶって降りる。歩行では遠い目をして歩く
・触覚の利用:パソコンの電源がわからない場合は手探りでパソコンをなで回す
・見切り発車:漢字が書けない時、「まぁいいや、書いちゃえ!」と、まずは殴り書き
・前頭葉の前子ちゃん:前後不覚に陥っている時、「私流の思い出し方」で
・考えを言語化:言語化すると声に出した行動と言葉が一緒になって記憶に残る
・パーツから想像:絵本袋を作る時、布を裁断することができない→「折って」縫う
・どんな脳でも学習する:意志の力が必要
・障害のカミングアウト:周囲も理解しやすく、手も差しのべやすい

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山田さんが専門職に問うこと
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・患者を自分よりも劣った人間のように扱う医療関係者が多いことに、患者になって実感した。
・患者のやる気をそぐようなことは言わないでほしい。
・脳の機能低下にとまどい、困っているのは本人なのだから、客観的立場でみている相手から、
 ダメそうだと指摘されると、本当にダメだと思う。
・叱責、あら探しをしないでほしい。できなくなったことばかりに目を向けるのではなく、
 できることを探し、患者さんのプライドを尊重しつつサポートしてほしい。


あらためて読んでみると、一段とグサりと胸に突き刺さります。
患者さんのモチベーションを下げない言葉掛け、この人は一体何にストレスを感じて、
ここでこのようにうずくまっているのだろうと配慮する気持ちが大切だなぁと…
自身の高次脳機能障害を主観的に、そして客観的に書いている貴重な本だと思います。  
Posted by lymansagyou at 22:52
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『きっかけ』 その時は突然に・・・ 3年前、夏のある日の出来事です。 「夕飯の準備ができましたよ」と母の声で父は食卓に着き、2人は食事を始めようとした時でした。 母の手からするりとお箸が落ち、体が崩れ落ちたのです。食卓には、お味噌汁がこぼれ 「おい、どうした!
天使の社会【自分年金のすすめ!】at 2005年06月30日 02:06
この記事へのコメント
はじめまして、世の中にはすごい人がいるものですね。
僕も両親を介護する身ですが、障害を個性として、
接するように心がけています。
Posted by きんのロケット at 2005年06月30日 02:05
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